頼むから

一匹の猫が私のベッドの上で眠っている。 すっかり寝支度を整えて寝室にやってきた私は、ベッドサイドで呆然と立ちつくした。 いくらか視界がズームアウトしたことにそのうち気づくが、そのぶん眠気が世界を重くする。 その猫(まぎれもなく私の飼い猫のシュ…

新奇なもの

その村の人びとは昔からのなりわいを捨てて異人から金をもらうようになった連中を指して、一度死んでゾンビにでもなったんだろうと囁きあった。そうでなくて、どうして自分の子どもを遠くに出稼ぎに行かせることができようか。また、そんな得体のしれないも…

星々

ぼくたちさんにんはよく、じべたにねころんでよぞらをながめていたペンキをハケでちらしたような星のふぢには、はじめのようになにかがむねをみたしていくようなかんかくはしだいにうすれていったものの、そうやって、なにもせず、ながれぼしがながれるてい…

Even in the Dark

「からだを置き忘れる」というフレーズが気づいたら頭の中を漂っていて、試しにググってみたら面白い文章が見つかった。こういう検索エンジンの使い方もあるんだなぁ。「ことばは死に、そして身体は意味に縛られている。その救いのなさ。」「・・・身体が自…

Hoppipolla

「変化はあると思うよ、長い目で見ればだけど」彼女はそこで、ふせていた目を真正面から私に据えた。「だぶんね」やけに力強いじゃないか。

sunday afternoon

それとともにもっと強い印象を持ったのは、深い悲しみのさなかでの、なにかすべてを削ぎ落としたあとの<明るさ>である。…この<明るさ>がホスピタリティの交感の底に漂っていなければならないのだと、つくづく思った。 (『「聴くこと」の力』より)この…

Are you goin to scarborough fair?

人間は些細な喜びを断念することを学ばねばならぬ。そして戦争とは、それを学ぶ絶好の機会だ。戦争は人間の本質を暴く。本質的でないことはみな拭い去られる。(「哲学、女、唄、そして…」、72頁)

batcat

ひょんなことで鶏を刎ねる(血抜きする)ことになった。私には初めての体験だ。鶏はじたばたさせると、体の大きさの割になかなか手ごわい。動きを静めるためには、羽の付け根の部分をつかんでやるといい。これできゃつは(何筋というのか知らないけど)筋肉…

遠山鳥

理解しようとすることの大切さを、貶めているのではないよ。それはひとである以上、他者との関係性においてとても本質的だと思う。僕なんかは、そばにいる人にうまく近づいていけてるのかしらと、ナイーブな不安で時折足がすくんでしまう。そのための媒介と…

神は細部に宿り給う

サイドからのミドルシュートをキーパーがバットで弾き返すそばで、行司が勝ち名乗りをあげるところまでいくと、異種格闘戦からもなにか生まれてもおかしくないじゃないかという期待感くらいは膨らみます。

farewell to my country

少し厚めのコートを着て、見栄えがいいでしょう?それくらいがいいんです。あつかったらきちんと畳んで、脇に抱えておきなさい。 人も花も春めいた今日も、ダウンジャケットに袖を通すのでした。

The Ghosts Of Saturday Night

思春期に惚れた人といえば、人間としてならいくらでもあるが、その生きかたに惚れたというならば、ジョルジュ・ビゴーと原田熊雄を挙げる。前者は歴史の教科書でおなじみの風刺画家で、後者は元老西園寺公望の秘書を務めたひとだ。原田が口述筆記で残した「…

ぼやく

なんだ、夢か。

ああもうだめだ

少年はいつも法螺ばかり吹いていました。オオカミが来たぞ。最初は彼の言うことを信じて備えていた住民も、やがて相手にしなくなりました。ある晩、少年が窓に目をやると、オオカミが朧月のもと浮かんでいるのでした。オオカミが来たぞ。少年は声が涸れるま…

「卵と壁」は現象だと考えられるけど、一方で、頭んなかの観念という解釈も可能です。だから、「卵の側にたつ」ということは「卵の側に立とうとし続ける」ことでもあり、その意味では、静的な状態というよりは内的過程なのだと思います。ええと整理するとこ…

Keep building me up, then shooting me down

温度計はマイナス10度を指していた。やっぱりね。さっきから足先の感覚がなかったんだ。窓枠の水滴はつららになって、吹雪を受けてかたかた鳴っていた。私はなんとか呼び覚まそうと、親指と人差し指をしきりに擦りあわせていたが、お互いが何か固いものにぶ…

今日は死ぬのにもってこい

打水の音と柔らかい日の光にまどろみながら、起きようかないやあと少しなどと逡巡しているうちに、玄関のチャイムが鳴って、出てみれば起きぬけの来客は早口でまくしたててきた。「おはようございます。突然ですがいま世界は大変な不幸に包まれていると思い…

ちぎれた空の波間から

琵琶湖から虹が昇るのを見ました。初めてそれを見たというひとの吃驚する表情を撮っているうちに、肝心の虹はトンネルに隠れてしまいました。 蛇谷ヶ峰

Dont try and change my tune

長野の親戚に蕎麦をつくっているひとがいます。親戚間でたまに集まりがあっても、お互いほとんど顔をださないようにしているので、あまり、というかほとんど面識がありません。相手のことはほとんど知らない。寡黙な人です。結婚式かなにかで同席した折りに…

やうやう白くなりゆく

What more could anyone want??!

http://video.google.com/videoplay?docid=-3634664472704568591 cited from Davidson Films, "MARY AINSWORTH: ATTACHMENT AND THE GROWTH OF LOVE" この実験をアフリカのどっかの国でやったら、母親のほうが未婚の見知らぬ女性と子どもを一緒の部屋に入れ…

いい塩梅に降りました

霰みたいなんを顔面で受け止めながらチャリこいでるときに、winter fallのサビが頭をリフレインしはじめた。こういう、ふとした時に突拍子もないことが頭に浮かぶのは、なにか感覚的なスイッチが入ったことの表れなのだろうか。歌詞がどんなだったか記憶をた…

それでも君を思い出せば そんな時は何もせずに眠る眠る

百万遍の交差点に知人がつっ立っていて、待ち人かと思いつつ声をかけると、どうやら誰かから話かけられるのを待っていたみたいだった。聞けば、日中は家や研究室にいたくないのだという。そのまま近くの喫茶店に入って時間を過ごし、閉店の時間になってあた…

どこをえらばうにも あんまりどこもまっしろなのだ

山頂でケーキはそれはもう幸せだったけど、帰り道は胃がもたれて。

San Diego Serenade

夜をまたいだ朝がなにかしら正当なもののように思えてくる。鴨川はセレナーデって雰囲気じゃないわな。

毎晩10粒のキニーネ剤を飲むこと、そして女性には近づかないこと

胸がざわついてきた。(共在感覚)

ドライフラワーの赤色みたいに

「死ぬかと思った」て言うことがあるけど、実際に死ぬかと思う体験をしている瞬間にはそんなこと考えない。振り返ってみるとそういう瞬間には、「この状況をどうやって切り抜けようか」とか「あそこ落ちたら引っかかるとこないし、かなり落ちそう」とか、む…

Don’t Wanna Cry

太田川で叫んだらすっきりしたと弟。

Sweet Pain - Nusrat Fateh Ali Khan

スイッチをオン・オフするように、生と対置したかたちで死をイメージできなかった。ひとの肉体的な死に触れて、悲しいとか怖いとか感じた覚えがない。両者の境目は連続体の一地点で、相互に往来が可能なのではないか。そして死とは、時間をかけて体内に浸透…

California show your teeth

心理学で使われる分析手法や療育の方法て、人類学に活かせるところが少なくないように思う。たとえば「認知的発達における文化の役割」とかの学際的な文化間比較研究になると、教育人類学者やカリキュラム研究の専門家の定義する「認知」でやったところで、…