今日は死ぬのにもってこい

打水の音と柔らかい日の光にまどろみながら、起きようかないやあと少しなどと逡巡しているうちに、玄関のチャイムが鳴って、出てみれば起きぬけの来客は早口でまくしたててきた。

「おはようございます。突然ですがいま世界は大変な不幸に包まれていると思います。連日報道される、戦争、貧困、環境破壊どれもが人間生活の根幹を揺さぶっています。数えきれないほどの命が失われています。これは、私たちが神の教えに背いていることのあらわれではないでしょうか。こうした時代だからこそ、聖書の教えに戻るべきだと思います。これ、差し上げますので読んでみてください。さようなら。」

はいさようなら、と合の手を入れる暇も彼女は与えてくれなかった。出来れば話したかったのに。寝ぼけ眼でもらったパンフに目を落とすと、でかでかと「目覚めよ!」と書かれてるのが目について、ぶれかけた朝がひとときにおさまったのでした。