Sweet Pain - Nusrat Fateh Ali Khan

スイッチをオン・オフするように、生と対置したかたちで死をイメージできなかった。ひとの肉体的な死に触れて、悲しいとか怖いとか感じた覚えがない。両者の境目は連続体の一地点で、相互に往来が可能なのではないか。そして死とは、時間をかけて体内に浸透していった蓄積の結果ではないか。そんなことを考えたりした。今になって振り返れば、小さい頃よく読んだ童話の死生観からかなり影響を受けたように思う。

その意味での死ならば、むしろ日常に近い。他者からは認識されず、自分だけが体内にこわばった異質なものを感じながら日常を過ごすのだろうか。味のないガムを噛み続けるような死。もしかしたら自分でも状態の変化に気付けないかもしれない。死ぬまで死を恐れるのかと嗤う声が聞こえてくるあたりで、考えるのをやめておく。デカルトが旅に出たのと同じ理屈で、そこから議論をすすめるためにはベースになるような異質な他者/ものとの出会いや体験を重ねてからにしたい。